映画『天然☆生活』 永山正史監督
- 【第一弾】映画監督 / インタビュー対談

20.12.13

フィルミネーション、映画監督インタビュー対談。第一弾は、アメリカ・サンフランシスコに本社がある、公共図書館・教育機関向けのVODサービスであるKANOPYでの配信が決まった映画『天然☆生活』『トータスの旅』の監督である、永山正史監督との対談です。

田辺・弁慶映画祭でも5本の指に入る作品!

掛尾氏:『トータスの旅』は映画祭でも数多くの賞を記録されていて、田辺・弁慶映画祭の中でも5本の指に入る素晴らしい作品でした。

永山監督:ありがとうございます。2019年に撮影していたのですが、『脳天パラダイス』の山本監督が行なっているシネマインパクトのワークショップやることになりまして、そこのつながりというか。ちょうど「天然☆生活」を山本監督が見に来てくれて、お声がけいただいたんですけど。そこから現場でも手伝いますと言って、メイキングとりますって。

掛尾氏:次回作の準備も進んでいるんですか?

永山監督:そうですね。企画とか脚本をプロデューサーに持ち込んだりして、映画化目指して動いているのも同時進行で進めています。

「今はネットからいろんな映画が見られやすくなった」

掛尾氏:今の日本って、自主映画、小さいプロダクション規模で作った映画が、映画祭で上映されて、そのあと比較的劇場公開もされやすくなったと思うんです。そういう状況って監督はどう思います?

永山監督:お客さんから見れば小さい規模であれ、大きい規模であれ、見たら同じだと思うので。いろんな映画が見られやすくなったのは面白いと思いますね。

掛尾氏:作り手の自分としてはどう思いますか?

永山監督:監督や俳優、スタッフにとっては現場が本番ですけど、作品の本番は劇場公開だと思うので、その場が色々あるのはいいことだと思います。

掛尾氏:今、映画もデジタルになって作りやすいという状況と、東京のミニシアターとかワンスクリーンであるところで4本時間を変えて上映できる状況なので、映画の作り手にとってはよくなったんですね。

永山監督:そうですね。昔だと8ミリで自主映画作ってる方、たくさんいらっしゃったと思うんですけれども、それが今のように劇場でかかってたかっていうと、おそらくあまりなかったと思います。

日本では映画監督が職業として成り立たない

掛尾氏:日本では、映画監督が職業として成り立ちにくい部分があります。映画を作るチャンスは広がっているけど、職業的に成り立ちにくい今の日本の映画の状況の中で、映画監督としてやっていることについて、どう思いますか?

永山監督:メジャーな映画でさえ、映画監督が職業として成り立たないのは結構聞く話です。監督料とか聞いても、「それ、スタッフの方がいいじゃん。」と。おそらく、1年中、助監督を忙しくやっている人の方が、監督より稼いでるんですよ。そういう状況は不健康、不健全、やりがい搾取みたいなところは感じますね。

掛尾氏:今のインディペンデントの商業映画自体、かなり厳しい部分があるのは事実なんですけど、そういう部分と外国を比較した時に、映画を撮るチャンスが広がっている。そういう意味では、希望・夢がありますよね。

永山監督:もっと夢を持ちたいです。映画監督が憧れの職業に入るようになってほしい。

掛尾氏:でも、「トータスの旅」をみて「若い人たちが続け」って希望・夢になっているわけですから。

永山監督:そうだといいのですが(笑)

海外では反応が良い

掛尾氏:今回、『トータスの旅』の配信が決まりましたが、外国の人に見てもらった時に、どういう風に理解されると考えますか?

永山監督:そこは日本とあまり変わらないんじゃないかなと思います。海外と日本のお客さんの差でいうと、上映中も歓声をあげて拍手したり、Q&Aで積極的に手が上がったり、といったわかりやすい違いはありますが、映画を見た人の反応は人それぞれで、海外も日本もそんなにないと思ってます。ただ「天然⭐︎生活』では、海外の方が浸透している菜食主義について描いているので、彼らにとっては日常のあるあるネタみたいに感じるようで、反応が強い。そういう描写ごとの違いは出ると思います。

掛尾氏:日本の映画祭だと反応を表に出さなかったりしますが、海外では名も知れない監督や出演者の作品も人が来て楽しんでって光景をいくつか見ます。日本では味わえないので、監督としては気持ちが良いですよね(笑)

掛尾氏:日本では普通の劇映画は上映されても、なかなか一般の人に目は触れないじゃないですか。特に日本映画なんか、ある特定の国の映画は、例えばイタリア映画祭やスペイン映画祭に行くお客さんのように、海外の映画祭やフィルメックスに行くようなすごい映画ファンだけが見ている。ただ、配信になれば、インターネットを通していろんな人に見てもらえる。そうすることで、映画ファンとは違う反応があると思いますね。そういう中で、「トータスの旅」を見ようという配信会社が出るというのは、どう感じますか?

永山監督:海外のお客さんの反応には手応えを感じていたので、配信でも見られる機会を広げていけたら嬉しいです。これは海外で上映する時にいつも不思議なんですけど、自分も出てる俳優も知られてないのに、ふたを開けるとお客さんいっぱいで、満席になることが多いんです。上映が終わった後もすごい盛り上がってお客さんが帰らないこととか。もちろん現地映画祭スタッフの方の宣伝の力も大きいと思いますが、海外の人たちに喜んでもらえるのが分かるとモチベーションになりますね。

掛尾氏:海外の映画祭は行くと色々は発見がありますよね。

映画祭以外でも見られる場が増える!フィルミネーションからの海外への配信が広がる可能性

掛尾氏:最近感じるのは、多くのインディペンデント映画・日本の実写映画は、アニメと違って、映画祭以外で目に触れない。日本で多く造られる若手の低予算の小規模の映画が、実は先進国のいろんな若い人の問題をすごく描いてるんじゃないかと。他の国々の映画産業が大型化している中で、日本では数多くの小さい映画が作られている。邦画だけでも600本超えるほどで、その中でも400~500本は、インディペンデント映画というのが、もっと目に触れれば新鮮に映るのに。海外ではよく見る光景ですけど、その点はどう思いますか?

永山監督:日本の若手の映画が、いろんな国の若者にも共通する問題を描いている、というのはその通りだと思います。見る場所や機会が整って、宣伝もうまくいけばもっと海外でも見てもらえるのではないでしょうか。映画祭ではその機会がありますが、もっと外に広げていけたらいいと思います。

掛尾氏:確かにそうですね。海外の映画祭では、優秀な映画監督を見つけると映画祭が抱えようとするので、比較的、毎回呼ばれるチャンスが増えます。ただ、有名監督の作品だけではなく、もっと普通に公開されている若い監督も実は見てもらえれば、海外に受け入れられるものがあると思うんですよね。東京というか日本の人が描きたいことは、フランス・アメリカ・ドイツの先進国の若い人、そこで暮らす人たちに共通するものが多いと思う。それがこれほどたくさん作られている映画の多くは、出会いがあれば、受け入れられるんじゃないかと思うんですよね。

永山監督:どうすればたくさん出会ってもらえるかを考えないといけないですね。例えばNetflixやアマゾンプライムで日本の若手の映画がたくさん並んだとして、話題になっている強力なラインナップの中から選んでもらえるのか。大作映画も小規模な映画も、お客さんにとっては同じ映画と言いましたが、選んで見てもらえるまでのハードルは高いように感じます。

掛尾氏:映画ファンなら是枝さんの映画だとかわかるけど、どこかの病院で入院している人が見る・是枝さんとか知らない人がみる場合は、今たまたまやっているから見ようとか、いう話じゃないですか。それで面白いと思うかどうか。昔(テレビで)昼にやっていた映画を見ると面白かった、よくわからないイタリアの映画の監督だったけど。そういうチャンスがあるね。例えば、『万引き家族』は、格差社会の中で弱者が寄り添って生きるというのは、全世界に伝わるテーマです。是枝さんだから、という理由で見るのでなく、無名な人の作品でも、見る機会を与えれば。そういう意味ではフィルミネーションってすごくいいプラットフォームだと思うんですよね。

自分が作りたい作品を作る ー永山監督の映画制作ー

掛尾氏:永山監督は、映画を作るとき、観客を意識して作りますか?それとも、まず自分が作りたい映画を作るんですか?

永山監督:観客っていっても人それぞれだし、観客を大きくとらえた時に、一体何を指してその人たちが面白がるのか、その価値観とか、それってわからないじゃないですか。だから自分がお客さんとして見た時に、面白い、楽しめる、を考えて作ってます。他人が面白いより、自分が面白いか。結局はそれでしか判断できないと思うんですよね。もし他人の考えが分かって、それで観客を意識して映画を作っている人がいるのなら、傲慢だなと思います(笑)。

掛尾氏:その時にプロデューサーや親しい人に確認したりはありますか?

永山監督:脚本を人に見せるのはありますね。自分が気づかないところを指摘してくれたり、新たなアイデアをくれたり

掛尾氏:聞く耳は持ってるんですね笑

永山監督:もちろんです笑 撮影現場でも、俳優やスタッフたちからの提案で自分の想像していなかった面白さが生まれますから。最終判断が自分なだけで、判断に至るまでは皆の脳味噌の力を借ります。

掛尾氏:本読んだりしていると、原作ものだったり、実話とか事件ものをやってみたいというのはありますか?

永山監督:原作は自分が面白いと思うものならやりたいですね。実話や実際に起きた事件に関しては、そのままの形で映画にしないとしても、確実に毎回影響を受けてると思います。今映画化したいと思っているものの一つは、実際の事件が発想のベースになっています。日々のニュースを見て悲しかったり怒りを感じたり、そういうのが元になったりしますね。

掛尾氏:今回海外に出るということですけど、海外に出て仕事をすることは考えてますか?

永山監督:考えてます。海外と組んでやりたいという思いもありますね。セールスもです。日本で作って海外で売るのももっとやりたいです。海外で作ってみたいのもあります。

掛尾氏:その時の企画は海外は意識した企画ですか?

永山監督:例えば日台合作で考えたとしたら、ロケーションや登場人物は台湾を意識することになると思います。

掛尾氏:日本台湾でやって見たいですか?

永山監督:例えばですけどね。そういうやりかたも興味はありますね。

フィルミネーションへの期待 ー今後もたくさんの人に見てもらえればー

永山監督:今、フィルミネーションから配信が決まっているのは1社ですけど、今後広げていけたらと思います。そこは自分ではどうやったらいいかわからないところなので、お願いしています。

掛尾氏:フィルミネーションでいろんな人に見てもらって、面白いという評判が経てば、またチャンスが広がると思いますね。海外の映画祭って厳しい部分もあるけど、批評が厳しくてもお客さんが優しい。

永山監督:そうですね。コロナもあって、今後映画の環境がどうなるのかまだ見えないですが、配信でチャンスを広げるというやり方も利用できると思います。今後決まっていく配信でどんな反応があるのか、楽しみです。

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